保険治療と自費治療で比べてみました【被せ物編】
今回は被せ物の治療(歯の根が残っている場合に行う治療)でよく選択される方法である硬質レジン前装冠とメタルボンドの違いについてご説明いたします。
この2つは構造が似ているため、一見差はほとんど分からないと思いますが、実は審美的な性能が大きく違うことをご理解いただければと思います。
保険適用の硬質レジン前装冠
硬質レジン前装冠とは主に前歯の治療の時に用いられる方法です。
硬質レジン前装冠の構造は、内側は金属の素材でできていて、外側の他の方から見える部分はレジンと呼ばれるプラスチック樹脂の素材を貼り付けています。
これは金属の土台の上に歯科用のプラスチックを少しずつ付けて、特殊な光で固めて作っていきます。
しかし、この硬質レジン前装冠は使える歯が限られているため、全ての歯に対して行える治療ではございません。
硬質レジン前装冠で治療を行える歯は、前歯から奥歯に向かって4本目の歯までです。
右上4本、左上4本、右下4本、左下4本の合計12本です。
保険治療内では前歯から奥歯にかけて5本目以降の歯は銀歯(金属の被せ物)になります。
≪硬質レジン前装冠の特徴≫
使える歯の箇所は限られますが、何と言っても保険適用ができるため費用が少なくて済むことが最大の特徴と言えます。
1本につき約5,000円~8,000円くらいのイメージです。
治療が必要な歯の本数が多くなると、それなりに費用が掛かってくるので、歯の治療にお金を掛けることが難しい場合は硬質レジン前装冠を選択するとよいでしょう。
しかし、歯の外側に使用している素材はプラスチック樹脂のため次のような弱点もあります。
●透明感が少なく他の自分の歯との色の違いが気になる
●カレーやコーヒー、ワインなどの着色しやすいものを飲食すると変色や着色が起こりやすい
もちろん丁寧に歯磨きを行ったり、歯科医院にて着色落としなどのクリーニングを行っていれば、すぐに黄ばんで汚い見た目になるようなことはございません。
お口の中のケアに気を使っていれば、長い間使用できます。
自費治療のメタルボンド
硬質レジン前装冠と同じく、土台となる内側には金属を使用し、外側の他の方に見える部分にはセラミック(陶器の素材)を付けた2層構造となっております。
これらセラミックを少しずつ盛り足していき、専用の機械で焼き付けて作っていきます。
メタルボンドは全ての歯に使用できます。そのため奥歯の治療にも適用できます。
≪メタルボンドの特徴≫
セラミックの素材は透明感があり、細かな色の調整ができます。
そのため他の歯と色を合わせる事で見た目の違和感を無くすことも可能です。
また、黄ばみや着色が起こりにくく表面がツルツルのため、汚れも付きにくいのも良いところです。
たとえ汚れが付いたとしても歯ブラシでサッと磨くだけで大体の汚れを落とすことができます。
しかし、自費治療のため保険を適用することができず費用が多くかかります。
自費治療は各歯科医院によって費用が様々ですが、おおよその目安は約80,000円から150,000円となっております。
性能が良いため費用が高くなりますが、特に前歯などは他の方からよく見える部分なので、見た目をよくしたい場合にはメタルボンドがオススメです。
自費治療での被せ物はメタルボンドだけではなく、被せ物全体がセラミックでできている「オールセラミック」や、プラスチックとセラミックを混ぜた「ハイブリットセラミック」などがあります。
これらとメタルボンドの違いは強度や耐久性にあります。
メタルボンドは内側の素材が金属でできているため、オールセラミックやハイブリットセラミックに比べて頑丈であると言えます。
しかし、見た目の美しさはオールセラミックの方が上です。
メタルボンドでも十分に綺麗な見た目にできますが、より美しさを追究する場合にはオールセラミックがオススメです。
硬質レジン前装冠とメタルボンドの共通の注意点
双方とも内側には金属を使用しています。
そのため、金属アレルギーのある方は健康に害を及ぼす場合があるため、これらの治療は行うことができません。
また、金属アレルギーではなかったとしても、長年使用することにより徐々に金属成分が溶けだし、歯茎が黒く変色する場合があります。
メタルボンドは内側に使われる金属が貴金属を使用している場合もあるため、金属特有の健康に対するデメリットは少なくなります。
被せ物治療を行う際には、どのような素材が自分のお口の中に適していて、費用や見た目など何に対して重きを置いているのかを歯科医師とよく相談してから行うことをオススメします。
まとめ
硬質レジン前装冠とメタルボンドは双方ともに2層構造になっています。
費用を優先するのであれば保険適用の硬質レジン前装冠、見た目や性能を優先するのであればメタルボンドにするとよいでしょう。
しかし双方とも金属を使用しているため、金属アレルギーの方は注意をしてください。
人工の歯を入れる場合には様々な選択をすることができるので、歯科医師とよく相談をしてから判断をするとよいでしょう。